ムーザ芸術研究会について

ムーザは言うまでもなく芸術の女神であるが、よく詩人が「わたしにムーザが舞い降りて」などと語るので、詩（文芸）の神だと思われているが、実は音楽の女神でもあった。"music"という語がMusa（英語ではMuse）に発していることはいうまでもない。このことは詩（文芸）と音楽の密接な関係をよく示している。優れた詩を朗読すればそれは楽曲のように響くし、美しい楽曲はポエジーを伝えることはだれもが知るところである。しかし、詩と音楽の関係はかならずしも人文学からの充分な研究を受けてこなかった。歌曲やオペラでどのような台本が用いられているか語られることがあっても、それはおおむね、作品の外側の歴史的事情の解説にとどまっている。美しい詩文が「音楽性」を持っていると言われるとき、その「音楽性」が実際の音楽とどう関係しているのか語られることはほとんどない。本会はこのような問題意識に基づき、文学と音楽の双方に学術的関心を持つ者が集まり、この二つの芸術様式の本質的な連関のメカニズムを探っていこうというものである。